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Activities that we do

​一宮学園で取り組んでいる各種活動です。

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 1.トラウマインフォームドケア

ト ラウマを体験した子どもは、さまざまなトラウマ反応を示します。トラウマ反応は、安心できる環境や、適切な心理的サポートがあれば、自然に回復していきます。しかし、トラウマのタイプや重篤度によっては、心身のさまざまな病態に発展することも少なくありません。最近では、幼少期のトラウマ体験が後の成育にさまざまな影響をきたすことが海外での研究でも示されています。(ACE等)

 一般的に、トラウマを引き起こすような出来事を体験した子は、トラウマ症状が表出した場合、それが過去の体験が関連したものとは結びつかずに、自責感を抱き自信を喪失することに繋がるとされています。そして、悪循環を繰り返す中で、前途のようにさまざまな心理社会的な困難が表出することが多いと示されています。そこで、「あなたが悪いのではなく、過去の体験によって心が風邪をひいているだけである」「これまでの体験の記憶は消すことは出来ないが、体験してきたことの捉え方や、トラウマ症状を自分でコントロールすることができる」ことを本人と学習し、自責から自己効力感へと変化していく中で回復への兆しが実感できるものにしていきたいと考えます。 「トラウマインフォームド・ケア」は、子どもに関わる全ての大人(機関…施設・学校・保健センター・地域子育て支援機関等)が、トラウマの影響とその回復の過程について専門的な知識を得ること・トラウマの症状やそのサインに気がつくこと(アセスメントにトラウマの視点を持つこと)・トラウマ症状への有効性が実証された適切な方法で対応

できることです。

 よって、当園では、虐待等の不適切な養育の影響によって抱えた「トラウマ」や「愛着不全」への対応に関する専門的な知識・それに基づくペアレンティングを始めとした対応スキルの養成・TF-CBT等によるトラウマにフォーカスを当てた治療に研鑽を積みます。

また、単にエビデンスあるプログラムをどの児童にも一律に提供するのではなく、エビデンスベーストプラクティス(evidence-based practice: EBP)の視点に基づき、子どもの特徴、文化、優先傾向に照らして(アセスメントが基礎)、最良の利用可能な研究成果(=エビデンス)を、臨床技能に統合することを目指します。

 詳細については、副施設長山口までお問合せください。

2-1.暴力・暴言を用いないスキル

子 どもの問題行動を予防するスキル。大人が子どもに行って欲しいことを具体的に話して練習し、その行動が見られたら具体的に誉めるといった行為を繰り返すことで大人と子どもの信頼関係が出来、子ども自身が適切な社会スキルを多く身につけて社会で成功する可能性を高めます。6つのセッションから成り立つ援助技術を実践しています。当園では、正規の講習を受講して資格を取得した複数のトレーナーが、子どもへのケアに当たっています。詳細については、施設内非暴力研究会 松田までお問い合わせください。

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 2-2.セカンドステップ

1 980年代に米国にて作成された教育プログラムです。2001年には、全米で「もっとも効果的なプログラム」として、米国教育省より最優秀賞を受けました。日本では300を超える学校や保育園、児童養護施設などで実施され、効果をあげています。

 2-3.CAP 子どもへの暴力防止プログラム

CAP(キャップ)とは、Child Assault Prevention子どもへの暴力防止の頭文字をとってそう呼んでいます。子どもがいじめ・虐待・体罰・誘拐・痴漢・性暴力など様々な暴力から自分の心とからだを守る暴力防止のための予防教育プログラムです。

CAPプログラムには、以下の3つの柱があります。その柱をベースに、子どもへのあらゆる暴力を許さない、子どもが自分の大切さを実感できる社会づくりを目指し、CAPプログラムの普及によって、おとなと何より子どもに勇気を広げていきます。CAPプログラムは「職員ワークショップ」(専門職対象)、「地域セミナー」(地域のおとな対象)、「子どもワークショップ」の3つで成り立っています。まず学校・家庭・地域の三者が一体となって、子どもたちが安心・安全に成長できる環境を整え、その上で子ども自身に大切な自分を守るための知識とスキルを伝え、何ができるかを一緒に考えていく3つのアプローチをとっています。詳細については、ケア部 加賀までお問い合わせください。

2-4.生教育委員会「さわやか」

一宮学園では「性教育」に「性」ではなく「生」の字を用いています。それは、単に「性」を扱うことばかりに終始せず、性教育の視点を通して生活・生い立ち・他者と共に生きることの大切さを子どもたちに理解してほしい、との願いを込めたからです。

これまでの生教育実践や生活場面の中で、児童に対しては、「他者を大切にすること」に関連する言葉掛けを行ってきました。そして、児童間でトラブルがあった場合、他者を傷つけた児童は注意を受けます。勿論、必要な対応でありますが、加害行為の背景にある、過去の成育からくる要因への介入がありませんでした。他者に対して、加害行為をさせないこと・繰り返さないことのみに注目し、注意・指摘をおこなってきました。施 設に入所している児童は、養育上の問題を抱え社会の充分な支援が受けられずに要保護児童となり、家族から分離され、ここで生活しています。このことは、入所児童に共通した被害(分離)体験であります。要保護の対象になったこと、被虐待や性暴力等、不適切な養育を受けてきたにも拘わらず、「被害者として」のケアは充分になされず、加害に転じた時「加害者」としての対応のみになってしまっていることが課題としてあげられます。過去の養育の中で、「自分は大切な存在である」というメッセージが伝えられていない、または実感できていない。「自分の大切」が他者にもあること、それを侵してはならないことをどのように理解してもらい、他者との関係を築いていくのかについて、生教育の視点に立った実践プログラムの作成に着手しました。

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実践プログラム作成にあたり、個々が大切な存在であることや、個々にはプライベート(境界線)があることについて、シリーズ化した全13回の実践プログラムにより、先ず「自分は大切な存在である」とのことについて伝えました。他者の気持ち・関係性=二人称・三人称を伝える前に、先ず「自分の大切な体・時間・場所・物」、この1人称=自分をテーマに実践内容を構成しました。すなわち生教育は権利教育・人権教育であると考えます。これまで十分に権利が保障されてこなかった、あるいは様々な人権侵害を受けてきた児童に対し、自身の権利の獲得及び再獲得することから始めました。

これまでの実践では、職員から児童に「伝える(教える・指導する・知らせる)実践=~させる実践であり、実践時間の多くは職員からの語りを児童が聞いているという講義形式のものでありました。現在の実践は、職員が話題(場面)提供を行い、それについて児童と対話する・児童の意見を吸い上げるといったスタイル(SST)に変化してきています。教材の中身について〈「~してはいけません」というセリフで構成され、注意を喚起するもの〉から、〈児童へ投げかけ発言を求める教材「この場面であなたはどう感じますか?」〉へと変化し、児童と職員が語り合う場面が、多く見られる実践になっていきました。同時に過去の実践・教材が如何に児童に届いていなかったかを振り返る機会ともなりました。実践の中で発する児童の言動は、職員が児童を知る・理解する機会となり、それを基に新たな実践に取り組み、その繰り返しの中で「伝える実践」は

「伝わる実践(相互関係)」へと進化していきました。

さわやかがプログラム・教材を作成し、グループによる実践を行っている中で、個々の言動から課題が見えてきます。理解している児童・理解できていない児童、内容について向き合えず逃避する、過去の性被害体験を表現する児童、実践に来なくなる児童等、反応は様々です。グループでの実践により、園の全児童が同じ内容を知っていることで、相互作用や他人の考えや行動のスキルを知ること等のメリットがあります。

しかし、その一方で、実践から見えた反応を“個”としてフォローできなければ、「一人ひとり大切な存在である」という実践内容は生活の中での「大切にされている実感」へと結びつきません。生教育ルームにいる時間だけが“個”として扱われ、生活スペースでは集団養護の中で“個”が大切に扱われず埋没している、という側面があることは否めません。

この現状を打破するためには、性教育の視点を日常生活の基盤整備に生かすことが必要です。また、実践内容について理解できていない児童に対し、伝え方の工夫や個別の課題に合った実践を行う必要もあります。「一人ひとり大切な存在」が実感できる仕組みを確立する過程を通して、性教育実践が一つの援助スキルとして、職員が児童と共に成長できる活動にならなければならないと考えます。自己の大切さ」は、本来は家庭という安定した生活基盤の中で伝えられるもの・伝わるものですが、家庭に代わり養育している施設であっても、生活の中で「自己の大切さ」を実感し、それを可能にするベースとなるものが権利擁護です。

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近年、児童福祉施設において性の問題が頻発し、対応に迫られ性教育を始めていますが、その性教育を受けている子どもに大人のメッセージがどれほど伝わっているのか、という疑問を常に持っています。一宮学園で生教育実践を始めてしばらくしたころ、そんな私の疑問にストレートに応えたのは子どもたちでした。「そんなのわかっているよ」「それができないから困っているんだよ」との言葉に返答することができませんでした。    

過 去から現在の養育の中で育まれる「自分は大切な存在である」との実感は、その先の「自分の大切は他人にもある」ということにつながります。本来は、安定した生活の基盤(日常ケア・環境整備等)の中で大切さを実感するものです。しかし、必要に迫られ始動した実践では、生活という裏付けのない、いわば実感を伴わない中で、「あなたは大切な存在」という言葉のみが語られていました。このような生教育実践を重ねる中で、性教育の視点を通し、必要に応じて日常ケアの工夫・整備に立ち戻って着手するという反復がなければ、実践と実生活に大きな隔たりが生まれると考えます。

副施設長 山口 修平

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